日本のコメは長く続いた減反政策によって縮小されてきた。需要が増加しても、いったんやめた田んぼに再びコメを作ることはできず、生産量を増やすことなどできるはずがない。農業従事者の高齢化や後継者がいないことも、原因となっている。
1. 放出量が限定的であるため
政府が備蓄米を放出する際には、米価が急落しないよう慎重に調整が行われる。そもそも備蓄米は、国内の米不足や価格の急騰といった異常事態への対応策として備えられているものであり、これが放出されるのは市場の需給バランスが著しく崩れた場合に限られる。さらに、備蓄米の放出にあたっては、価格への影響を最小限に抑えるため、政府は綿密な計画を立て、状況を見ながら慎重に段階的な供給を行う。放出される米の量は、流通市場全体から見ればごく一部にとどまるため、短期間での価格下落は起こりにくいのである。また、政府は備蓄米の使用先を限定し、業務用や学校給食など特定の需要向けに供給するケースが多い。これにより、家庭向けの米価に直接影響が及ぶことは少ないのである。結果として、備蓄米の放出が行われても、米価の下落を招くような事態には至りにくいのである。
2. 品質や用途の違い
備蓄米は長期保存が前提のため、一般的な新米とは品質に差がある。保存中の風味や食味の変化が避けられないことから、消費者の間では敬遠されがちである。特に、備蓄米は保管中に乾燥が進み、炊き上がりのふっくら感が損なわれやすい。そのため、家庭向けの米としては需要が伸びにくく、結果的に市場での新米の価格に与える影響は限定的である。さらに、備蓄米は主に加工用や業務用として流通することが多く、外食産業や食品加工業界で利用されるケースが多い。これらの用途では、炊きたての香りや粘り気よりも、調理後の食感やコストが重視されるため、一般家庭の消費行動に直接結びつかない。加えて、備蓄米は流通に際して再検査や品質チェックが必要となるため、放出後すぐに市場に流通するわけではない。これらの事情が重なり、米価が下がりにくい要因となっている。
3. 物流や販売ルートの制限
備蓄米は主に災害時の食糧支援や業務用として利用されるため、一般の消費者向け市場にすぐ流通するわけではない。これには、備蓄米の保管施設からの移動や、特定の販売ルートを介するなどの物流面での制限があるからである。備蓄米は全国各地の指定倉庫で保管されるため、流通させるには事前の計画や輸送スケジュールが重要となる。さらに、品質の劣化を防ぐための検査や再処理が必要な場合もあり、流通開始までに一定の時間を要する。加えて、備蓄米は主に業務用や災害備蓄向けに活用されることが多く、一般消費者が目にする販売ルートに乗るまでに手間がかかる。特に、家庭向けの小分け包装に対応するためには、さらに追加の工程が必要となることが多く、これが市場への流通を遅らせる要因となるのである。その結果、備蓄米が放出されたとしても、直ちに家庭用の米価に影響を与えることは少ないのである。
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