数年前、家内の実家の義父が亡くなり、相続問題で弁護士に相談しました。2人の弁護士に相談する機会がありました。
独居老人で90歳を超えていた義父は、食事の世話もままならず、週に2~3回ほどヘルパーさんにお世話になっていました。相続人は家内と家内の妹でしたが、主に家内が義父の世話をしていました。義父は入退院を繰り返し、胃や首、手の手術を何度も受けました。そのたびに家内は片道約3時間の距離を移動し、大変な思いをしていたと思います。
義父の所有地には田んぼが少しありましたが、耕作放棄地になっていました。私はおせっかいにも中古のトラクターを購入し、田んぼを耕すために往復6時間をかけて5年間通いました。朝7時に出発し、帰宅するのは夜8時ごろになる生活を続けましたが、そのうち私自身が糖尿病を患い、思うように仕事ができなくなり、田んぼへ通うこともできなくなりました。
その後、義父は嫌がっていた施設に入所し、92歳で亡くなりました。家内も、一応はほっとしたのではないかと思います。残されたのは相続問題でした。当時、家内は腎臓摘出手術を受けたばかりで葬儀に立ち会えず、私が代わりに出席しました。
家内には相続する意思がなく、すぐに相続放棄の手続きを取りました。片道3時間の距離にある田んぼや古民家を相続しても意味がないからです。幸いにも家内の妹が相続してくれることになり、正直ほっとしました。もし家内が相続していたら、私たちの子供にも影響が及んだことでしょう。家内が病気でなければ相続していたかもしれないと考えると、ぞっとします。家内の代はともかく、子供たちの代にはもはや関係のない話になるのが望ましいと感じました。
弁護士に相談したところ、「たとえ相続放棄しても管理責任は発生し、何かあれば責任を問われる可能性がある」と言われました。相続放棄したのに責任を問われるのはおかしいと感じましたが、弁護士の意見なので一理あるのかとも思いました。しかし、別の弁護士に相談すると「相続放棄した以上、相続財産に関与してはいけない」と言われました。
どちらの意見が正しいのか分からないまま、家内は裁判所から取り寄せた相続放棄の書類を管轄の裁判所に送付し、手続きを完了しました。家内の妹が相続したため、大きな問題にはなりませんでした。2人の弁護士の意見が異なることに驚きましたが、どちらも正解なのかもしれず、最終的には相続人の意向が通るものなのだと感じました。
相続すれば固定資産税の納税や相続財産の管理が義務づけられるのは当然です。空き家は日本で900万個といわれています。正直なところ、私自身もその負担を強く感じています。しかし、多くの人にとって、これは避けられない問題でしょう。核家族化が進んだ現代では、子供たちは親元を離れ、自分たちの家を建てて暮らしています。親の家を相続しても、築数十年が経過していると、簡単に売却や処分ができないことが多いでしょう。まさに「負動産」となってしまうのです。
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