2025年12月現在、日本全国でインフルエンザが猛威を振るっています。例年より1カ月も早く感染拡大が進み、新たな変異株「サブクレードK」の流行により、多くの学校で休校や学級閉鎖が相次いでいます。
そんな中、SNS上では「インフルエンザワクチンを接種した人から異臭がする」「ワクチン接種で感染リスクが上昇する」といった根拠のないデマや誤情報が急速に拡散されています。産経ニュースやYahoo!ニュースでも報じられているように、こうした誤情報は人々のワクチン接種をためらわせ、感染拡大を助長する危険性があります。産経ニュース
正しい情報と誤った情報を見分け、科学的根拠に基づいた予防対策を実践することが、これまで以上に重要になっています。この記事では、最新のインフルエンザデマの実態と、厚生労働省が推奨する正しい予防法、そしてSNS上の誤情報から身を守る方法について詳しく解説します。
1. 2025年冬に拡散しているインフルエンザデマの実態
1-1. 「ワクチン接種で異臭がする」という根拠なきデマ

2025年12月1日、産経ニュースやYahoo!ニュースで報じられたように、X(旧Twitter)上で「インフルエンザワクチンを接種した人から異臭がする」という投稿が拡散されています。医学的には全く根拠のないこの主張は、人々の不安を煽り、必要なワクチン接種をためらわせる原因となっています。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、体臭に影響を与えるような成分は一切含まれていません。厚生労働省の公式情報でも、ワクチンの成分表が明確に公開されており、こうした「異臭」を引き起こす物質は存在しないことが確認されています。厚生労働省
しかし、このようなデマはセンセーショナルな内容であるため、リツイートや共有が繰り返され、あっという間に数千、数万人に拡散されてしまいます。特に新型コロナウイルスのワクチンを巡る議論で信頼性が揺らいだ経緯もあり、ワクチン全般に対する不信感が背景にあると考えられます。
1-2. 「ワクチン接種で感染リスクが上昇する」という誤情報
もう一つの深刻なデマが「インフルエンザワクチンを接種すると、逆に感染リスクが上昇する」という主張です。これは科学的にも医学的にも完全に誤った情報です。
インフルエンザワクチンは不活化されたウイルスを使用しているため、ワクチンそのものから感染することは絶対にありません。むしろ、ワクチン接種の最も大きな効果は重症化を予防することにあります。特に高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては、インフルエンザ脳症や肺炎といった重篤な合併症を防ぐ上で、ワクチン接種は極めて重要な予防手段です。
厚生労働省の公式サイトでも明記されているように、ワクチン接種は感染拡大を防ぐための基本的な対策の一つです。「ワクチンを打つと感染しやすくなる」という情報は、公衆衛生を脅かす危険なデマに他なりません。
1-3. 「今年からmRNAワクチンに変更された」というフェイクニュース
2025年9月、「今年からインフルエンザワクチンはmRNAワクチンになりました」という投稿がX上で拡散され、4400回以上リポストされました。しかし、ファクトチェックセンターの調査により、これは完全な誤情報であることが判明しています。ファクトチェックセンター
現在、日本で承認されているインフルエンザワクチンは従来通りの不活化ワクチンであり、mRNAワクチンは承認されていません。新型コロナウイルスのワクチンで話題となったmRNA技術への不安や誤解が、こうしたデマの温床となっているのです。
このような誤情報は、ワクチン接種率の低下を招き、結果として感染拡大や重症患者の増加につながる恐れがあります。正確な情報源を確認する習慣が、今まで以上に求められています。
2. なぜインフルエンザのデマはSNSで広がりやすいのか
2-1. 不安や恐怖を煽る情報の拡散力
人間の心理として、ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が記憶に残りやすく、共有されやすいという特性があります。「ワクチンは危険だ」「政府は隠蔽している」といった不安を煽る情報は、人々の感情に訴えかけるため、冷静な情報よりも拡散されやすいのです。
特にインフルエンザが流行する時期は、多くの人が健康に対する不安を抱えています。そのような心理状態では、センセーショナルな情報に飛びつきやすく、十分な検証をせずにシェアしてしまうケースが増加します。
2-2. SNSアルゴリズムの特性
X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSプラットフォームは、ユーザーの関心に基づいて情報を表示するアルゴリズムを採用しています。一度デマ情報をクリックしたり、リツイートしたりすると、類似の情報が次々と表示される「エコーチェンバー(反響室)効果」が生じます。
この結果、同じような考えを持つ人々のコミュニティ内で誤情報が繰り返し共有され、あたかも「多くの人が信じている真実」であるかのように見えてしまうのです。総務省も、プラットフォーム事業者に対して偽・誤情報対策を要請していますが、完全に防ぐことは困難な状況です。総務省
2-3. 権威への不信感と陰謀論の台頭
新型コロナウイルスのパンデミックを経験したことで、政府や医療機関への不信感が一部で高まっています。「政府は真実を隠している」「製薬会社は利益のために危険なワクチンを推進している」といった陰謀論が、SNS上で一定の支持を集めているのが現状です。
こうした不信感は、科学的根拠に基づいた公式情報よりも、「内部告発」や「隠された真実」を装った誤情報を信じさせる土壌となっています。実際には、厚生労働省や国立感染症研究所などの公的機関は、透明性の高い情報公開を行っていますが、そうした正確な情報が十分に届いていないのが実情です。
3. 厚生労働省が推奨する正しいインフルエンザ予防法
3-1. ワクチン接種:最も効果的な重症化予防策
厚生労働省が最も推奨しているインフルエンザ予防法は、流行前のワクチン接種です。ワクチンは感染を100%防ぐものではありませんが、重症化や合併症を大幅に減らす効果が科学的に証明されています。厚生労働省
特に65歳以上の高齢者、慢性疾患をお持ちの方、妊婦、小さなお子様がいる家庭では、積極的なワクチン接種が推奨されています。インフルエンザ脳症は主に5歳以下の子どもに発症し、死亡率は約30%、後遺症も約25%に見られる重篤な疾患です。ワクチン接種はこうした悲劇を防ぐ最も確実な方法なのです。
接種時期は10月から12月上旬が最適とされています。ワクチンの効果が現れるまでに約2週間かかるため、流行が本格化する前に接種を完了することが重要です。
3-2. 正しい手洗いとアルコール消毒
インフルエンザウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。接触感染を防ぐためには、こまめな手洗いが最も基本的かつ効果的な予防法です。
厚生労働省が推奨する正しい手洗いの手順は以下の通りです:
流水で手を濡らし、石鹸をよく泡立てる
手のひら、手の甲、指の間、指先、爪の間、親指、手首まで丁寧に洗う
流水で石鹸をしっかりと洗い流す
清潔なタオルやペーパータオルで水分を拭き取る
特に、外出先から帰宅した時、食事の前、トイレの後には必ず手洗いを行いましょう。水で手洗いができない場所では、アルコール濃度70%以上の手指消毒薬を使用するのも効果的です。
3-3. マスク着用と咳エチケット
咳やくしゃみによる飛沫感染を防ぐために、マスクの着用と咳エチケットの実践が重要です。特に人混みや公共交通機関を利用する際には、マスク着用が推奨されています。
咳エチケットとは、咳やくしゃみをする時にティッシュやマスク、袖で口と鼻を覆い、他の人に直接飛沫がかからないようにすることです。万が一、何も持っていない場合は、手のひらではなく肘の内側で口を覆うようにしましょう。手のひらで覆うと、その手でドアノブや手すりを触った際にウイルスが付着し、接触感染の原因となります。
また、室内では適度な湿度(50~60%)を保ち、こまめに換気を行うことで、ウイルスの活動を抑えることができます。乾燥した環境では、のどや鼻の粘膜の防御機能が低下し、ウイルスが侵入しやすくなるため、加湿器の使用も効果的です。
4. SNS上の誤情報を見分ける3つのチェックポイント
4-1. 情報源を必ず確認する
SNS上で健康情報を見かけたら、まず「この情報はどこから来たのか?」を確認しましょう。信頼できる情報源としては、厚生労働省、国立感染症研究所、WHO(世界保健機関)、各都道府県の公式サイトなどが挙げられます。
一方、個人の体験談や「知り合いの医者が言っていた」といった伝聞情報、匿名アカウントからの投稿は、検証が必要です。特に「政府は隠している」「マスコミは報道しない」といったフレーズが使われている場合は、陰謀論の可能性が高く、注意が必要です。
国家サイバーセキュリティセンターが推奨する確認ポイントは、「発信内容の情報源は何か」「発信者は誰か」「他でどう言われているか」の3点です。国家サイバー統括室
4-2. 複数の公式情報源と照らし合わせる
一つの情報だけを鵜呑みにせず、必ず複数の信頼できる情報源で確認する習慣をつけましょう。例えば、「インフルエンザワクチンの副作用」について知りたい場合、厚生労働省のQ&Aページ、医療機関の公式サイト、医学論文など、複数の角度から情報を収集します。
もし、その情報が本当に重要で確実なものであれば、複数の公的機関や報道機関が取り上げているはずです。逆に、一部のSNSアカウントでしか見られない情報は、デマの可能性が高いと考えられます。
政府広報オンラインでも、「インターネット上の偽情報や誤情報にご注意!」として、情報の真偽を確認することの重要性を呼びかけています。政府広報オンライン
4-3. 感情的な表現や極端な主張に注意する
「絶対に」「100%」「政府が隠す真実」「拡散希望」といった極端な表現や、不安や恐怖を煽る言葉が使われている情報は、デマの可能性が高いです。科学的な情報は通常、「〇〇の可能性がある」「研究によれば〜」といった慎重な表現が使われます。
また、画像や動画が添付されていても、それが本物とは限りません。過去の無関係な画像が流用されているケースや、文脈を無視した切り取りが行われているケースも多々あります。画像検索ツール(Google画像検索など)を使って、その画像が以前にも使われていないか確認することも有効です。
5. もしデマ情報を見つけたらどうすべきか
5-1. 安易にシェアやリツイートをしない
「これは皆に知らせなければ!」という善意から、確認せずに情報を拡散してしまうケースが多くあります。しかし、誤情報の拡散に加担してしまうと、結果的に多くの人に害を与えることになります。
シェアする前に、必ず情報の真偽を確認しましょう。もし確証が持てない場合は、「この情報は本当でしょうか?」とコメントを添えたり、公式情報へのリンクを追加したりすることで、フォロワーに慎重な判断を促すことができます。
政府広報オンラインでは、SNSでの偽・誤情報の投稿・拡散により、名誉毀損罪や侮辱罪に問われたり、損害賠償責任を負ったりする可能性もあると警告しています。安易な情報拡散には法的リスクも伴うのです。
5-2. プラットフォームへの報告機能を活用する
X(旧Twitter)、Facebook、InstagramなどのSNSプラットフォームには、誤情報やデマを報告する機能が備わっています。明らかに虚偽の医療情報や、人々の健康を脅かす情報を見つけた場合は、報告機能を使ってプラットフォーム運営側に通知しましょう。
多くの報告が寄せられた投稿は、プラットフォーム側で検証され、場合によっては削除や警告表示が行われます。一人ひとりの行動が、SNS空間をより安全なものにすることにつながります。
5-3. 正しい情報を積極的に共有する
デマに対抗する最も効果的な方法は、正しい情報を積極的に発信・共有することです。厚生労働省や国立感染症研究所の公式情報、信頼できる医療機関の情報を、自分のSNSアカウントで共有しましょう。
「今年のインフルエンザ予防法について、厚生労働省の公式情報を共有します」といった形で、信頼できる情報源へのリンクを投稿することで、フォロワーが正確な知識を得る手助けができます。
また、家族や友人との会話の中でも、「SNSで見たけど、本当かどうか確認してみたら違ったよ」といった経験を共有することで、周囲の人々のメディアリテラシー向上にも貢献できます。



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